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『ほら、沙樹、ちゃんと挨拶しろよ』
沙樹は、信のそばで、
恥ずかしそうに
ぺこりと頭を下げ
俺達に、ニコっと微笑んだ。
ああ、間違いない
この笑顔だ・・・・
俺は、笑顔に遣られながらも、
『よろしくね~沙樹ちゃん!
信なんかといると、
アホがうつっちゃうかもしれないから
気をつけてね~』
そんな冗談を言ってのけたが、
俺は二人が……
いや、沙樹がとても眩しかった。
それから、沙樹が信についてきたときは、
少しでも近くで、沙樹の笑顔をみたくて
つまんないことを言っては
沙樹を構っていた。
この間、信と別れたと聞いたが、
俺じゃ、あの頃の笑顔に
もどせないのか…っ!
……信がそばにいないと!
悔しくて、
やり切れなくて、
俺は、枕に顔を押しつけた。
──沙樹の香りがした。
こんな近くで、
沙樹の香りに触れているのに、
昨夜、あんなに激しく抱き合ったはずなのに、
沙樹がとても遠く感じた。
『…沙樹……』
胸が締め付けられた。
俺はベットから起き上がり、
部屋を見回した。
昨夜は気付かなかったが、
沙樹の部屋は、きちんと整理された
落ち着いた部屋だった。
ただ、俺の脱いだ服だけが
ベット下で暴れていた。
ふいに、
昨夜の激しいキスをねだる
沙樹の顔がよみがえった。
――沙樹は俺が守る。
シャツとジーパンを身につけ、
寝室のドアを開けると、
沙樹のコーヒーの香りが
一気に流れ込んできた。
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