10人が本棚に入れています
本棚に追加
車は、郊外のスタジオに向かっていた。
これから新曲のPV撮影だっだ。
『ほら、カケルっ!着いたぞ!
笑顔なんだろ、そんな顔してんなよ!』
信が隣で、ふて寝しているカケルに言った。
『えーっ、もう!?』
カケルは、車のカーテンの
隙間から外を見た。
『まだまだじゃねか。
コノヤロッー!!』
カケルは信に体重をかけて
ぶつかっていった。
『あははは……っ!
ごめん、ごめん!』
信は笑いながらカケルの攻撃に
耐えていた。
『許さんっ!』
カケルは、そういって、
シートに中腰になり、
かぶっていたキャップで、
反対側の席の幹成を叩いた。
『なんで俺なんだよっ!』
『あ、悪い!間違えた!
許せ、ポッキー!』
『だからっ!ミッキー!』
『あははは……!』
カケルはBeatsの中の、
ムードメーカーだった。
カケル本人が、どこまで意識して
やってるかは分からないが、
ライブ以外でも、自然とメンバー内の
リズムをとれる・・・そんなヤツだった。
カケル達が、ふざけあう中、
桐野は、車の窓のカーテンを開けた。
窓の外は、見慣れない景色が
流れては、消えていっていた。
桐野は、ただそれを
遠い目で追っていた。
最初のコメントを投稿しよう!