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どこからか、
泣きたくなるような
ギターの音と歌声がしていた。
『信? シン…なの?』
私は、急いで目の前の扉を
押し開けた。
薄暗いスタジオで背中を丸め、
ギターを弾く信の後姿があった。
信は、私に気付くと、
歌うのを止めた。
『信!続けて!!
その曲、聞かせて!』
『沙樹。
もう、おまえには歌えない』
『どうして! 信、お願い…』
涙が、あふれてきた。
『沙樹は、俺なんかいなくても、
全然平気そうだな。』
『信! そんなことない!
私、信がいなきゃ、信がいなきゃ……
お願いっ!もう一度……』
『沙樹が言ったんだろ。
もういいって、あの日。』
『待って! 信っ!
私、やっぱり、やっぱり……』
『じゃあな。』
『 シン───っ!!』
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