10人が本棚に入れています
本棚に追加
ドキドキしていた。
そして、ドキドキしている自分に、
驚いていた。
信と別れてから、この一ヵ月、
信のことばかり考えてしまう自分が嫌で、
すべての感情を遮断しようとしているうちに、
いつしか無機質で無感覚な私になっていた。
それが、桐野との一瞬で、
こんなにも急に胸が鳴るとはーー。
桐野は、ただ呆然と戸惑ってる
私の腕を放し、布団をめくり、
無言で私をベッドに招いた。
私は、桐野に導かれるまま、
もう一度ベッドに横になり、
ためらいがちに布団くるまった。
『冷たくなってるじゃないか。』
桐野は、しっかりと布団で私を覆った。
仰向けに寝た私の左肩が、
肘枕で横になっている桐野の胸に
あたっていた。
少し離れようにも、
狭いべットの中。
下手に動くと、また他が、
桐野に触れてしまうかもしれない。
私は、観念して
そのままじっとしていた。
触れているからか、
私の意識のしすぎか、
左肩が、熱い。
左肩から桐野の体温で
私の身体は温められていった。
そして、心もほぐされていった。
最初のコメントを投稿しよう!