7人が本棚に入れています
本棚に追加
そう言いたかった言葉は、出なかった。
何故かって?
それは…
「何をしているんですか?」
冷たい声が聞こえたからだ。
「壬生狼(ミブロウ)だ!」
そんな声と共に、人々はスッと道を開ける。
そんな道を歩いてくるのは、とても整った顔をした美少…いや、美青年。
太陽に輝く茶色い髪がとても美しい。
思わず見惚れていると、
「逃げるぞ!!」
まこちゃんが後ろから、私の腕を引いてきた。
ハッと我に返った私は、まこちゃんに合わせ、走り出す。
「待ちなさい!」
後ろからそんな声が聞こえたけれど、構っている余裕はない。
何故逃げなければならないなんて分からない。
けれど、なんだか…後ろからチラチラ見えるまこちゃんの緊迫した表情と『逃げなければ』という本能が足を動かしたんだ。
いっぱい…いっぱい走って。 体力がそろそろ限界になってきた頃、まこちゃんが足を止めた。
そして、昔風の家の影に隠れる。
「はぁ…はぁ……ここまで来れば、大丈夫か……」
まこちゃんは私の方を向く。
走っていたときとは打って変わって、嬉しそうな…ワクワクしてる、キラキラした目、弧を描く唇。
「なぁ、陽夏。 驚かないで聞いてくれよ…?」
「うん。 どうしたの?」
「俺、ここが何処か分かったんだ」
私は、次の一言で驚くなと言われたにも関わらず、盛大に驚いてしまう。
「ここは、京都だ。 でも…平成じゃなくて、幕末に来ちまったようだ」
………………ん? ばく…まつ…?
「えええええ!!?」
「う、うるさいって!!」
そりゃ、誰だって驚くだろう。 叫びたくなるだろう。
今いる時代が幕末だって…?
最初のコメントを投稿しよう!