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仕事を終えて、ケータイに着信がないことを確認する。
それから、早歩きで商店街を抜ける。
行き先はいつもの居酒屋。
「こんばんはー!」
ガラリと戸を開けると、店の大将が笑顔で迎えてくれる。
「ハナちゃん。
いらっしゃい。」
「ただいまー。
今日も疲れたー!
ビールお願いします。」
「はいよ。」
返事を聞くか聞かないかのうちに、奥の個室へと向かう。
お店はそんなに広くはないけれど、カウンター席と4人掛けのテーブルが2つ、あとは個室が2つある。
そしてそのうちのひとつの個室には…。
「ハナさん、お疲れさま。」
黒色の短髪で、スッと切れ長の目力の強い青年が、日本酒を飲みながら笑みを向けてくれる。
「翔太もお疲れさま。
カズマは?」
「手伝いしてるよ。」
「そっか。」
座ってまもなく、
「ハナちゃん、お帰り。」
カズマがビールを運んできた。
金に近い茶色の髪は、くるくるふわふわしていて、パッチリ二重で、世の中的には可愛らしいと言われるのだろう。
「ありがと。」
ビールを受け取ったのに、カズマはそのままサンダルを脱いで私の向かいに座った。
「え?手伝わないの?」
「休憩。
朝から立ちっぱなしだから、ちょっと休みたい。」
「ふーん?
翔太、かんぱーい。」
ビールのグラスを軽く持ち上げて、ぐぴぐぴ飲む。
「あ~!
おいしい!」
「でしょ?
オレ注ぐのうまい?」
「うまくなきゃ、困る。」
「ハナちゃん、厳しいなぁ。」
そう言いながら、テーブルに置いてあったビールを飲んでいる。
仕事帰りには必ずここに寄る。
翔太は商店街の魚屋さんの息子で、翔太と同級生で幼なじみのカズマは、この居酒屋の大将の息子だ。
といっても、カズマの本業は駅前の美容室の美容師さん。
人手不足なのか、飲みながらもお店の手伝いをしている。
…そこは、偉いけど。
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