第8章

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「商店街から出て、駅前に移った時?」 「ううん、まだ商店街に事務所があった頃に、しばらく消えた。」 「え?」 「事務所は、他にも社員さんがいたし、メールやらネットもあるから、仕事はしてたみたいだけど。 どこにいたのかは、誰も知らず。」 「そうなんだ。」 「今は、彰人さんと住んでるんだよね?」 「そうみたいだね。 元々、同級生って言ってたけど、年も離れてるしお兄ちゃんのことって、よくわからないんだよね。」 「まぁ、そうだよね。」 「あ!けど、お兄ちゃんが5年か6年くらい前に、2回目の離婚をしてから、一緒に住んでると思う。」 「…5、6年前?」 「うん。」 「偶然?」 「え?」 「レンさんがいなくなったのも、そのあたり。」 「お兄ちゃん、なにか知ってるだろうね。」 「そうかもね。 …って、そろそろシャワー入ってくる。」 「うん。」 「ハナさんは、カズマに添い寝してあげたらいいんじゃない?」 「なっ! なんか、今日その話ばっかり。」 「そうなの?」 「そうなの! もう、そんなに添い寝って重要なの?」 「重要~!」 なんて笑いながら、翔太はお風呂場へ行ってしまった。 添い寝なんてしないけど、様子を見にまた部屋へ向かう。 「ハナちゃん?」 ぼんやりと、カズマの声がする。 「起こしちゃった? 」 「ううん。」 「なにか飲む?」 「飲みたい。」 「スポーツドリンク?お水?」 「お水がいい。」 「了解。待ってて。」 「ハナちゃん、ありがと。」 「うん。」 冷蔵庫にペットボトルのお水を取りに行って、カズマに渡す。 ゴクゴクと、一気に半分くらい飲んで、ふーっと息を吐き出した。 「熱測る?」 「うーん、いいや。 寝たらちょっと楽になってきた。」 そりゃあ、熱があるのに立ちっぱなしの仕事とか、外でチラシ配ってたら、ツラいと思う。
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