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細くて長い指。
爪の形もきれい。
そっと指でなぞる。
もぞもぞ布団が動いて、顔を少しだけ出すと、
「くすぐったい。」
困った顔でいうから、可愛くて驚いた。
「ごめんね?寝てね?」
「うん。」
「苦しくないの?」
「苦しい。」
「それじゃあ、布団から顔出しなよ?」
「やだ。」
え、まさかの反抗期!?
「余計熱あがっちゃうよ?」
「大丈夫。」
「なんで意地悪?」
ペラリと布団をめくってみると、慌てて布団をかぶろうとしている。
「ハナちゃんが意地悪可愛くて、びっくりしてんの!!」
「へ?」
「そういうの、ズルい。」
いやいや、ズルいって言われても。
カズマは布団から出てくる気はないらしいから、仕方なく布団の上から、子どもをあやすようにトントンと手を動かす。
早く治りますように。
少しでも多く身体を休められますように。
願ったところで、なんの力にもならないかもしれないけれど、願わずにはいられない。
健康って当たり前のことじゃないって、こういう時に痛感するなぁ。
無駄に体力を消耗したせいか、スースーと規則正しい寝息が聞こえてくる。
そっと布団をめくると、可愛い顔でスヤスヤ寝ている。
苦しくないように、顔がちゃんと出るように布団をかけ直して、おでこにかかった前髪をそっと払う。
その瞬間、ふわりと風が舞ったと思ったら、布団の中に入っていた。
「お、起きてたの!?」
「…。」
あくまでも、寝たフリを貫くらしい。
それならそれで。
カズマの胸に、身体をスイっと近づける。
少し困ったように、さ迷った手が背中に添えられた。
そんな些細なことが、こんなに嬉しいなんて知らなかった。
添い寝って、絶大な可能性を秘めてたんだ。
…なんて。
今度こそ本当に眠ったのか、腕の重みがかかるけれど、それすらも心地いい。
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