第8章

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カーテンの隙間から差し込む光が眩しくて目を覚ます。 すっかり二度寝してしまった。 ふと、横を見ると、パッチリ目を開けているカズマがいる。 「起きてたなら、起こしてよ!」 そんなに至近距離で、ガン見されるなんて。 お肌ツルツルのカズマには、わからないかもしれないけど、これでも一応乙女ゴコロってやつが、ないわけじゃないのに! さりげなく、だけど確実にゆっくり背を向ける。 「え?ハナちゃん?」 二度寝する時に、マスクをつけ直せばよかった。 「なあに?」 「なんでそっち向いちゃうの?」 なんでって! カズマはいいかもしれないけど、私にも都合ってものが…。 スッと後ろから腕がまわる。 う、後ろから抱きしめられるって、案外恥ずかしい。 「翔太が、雑炊作っていってくれたよ。」 「ん。」 「美容室にお休みの連絡入れなくて大丈夫?」 「治るまで来るな、連絡もいらない! って言われたけど、店長にはメールした。 担当代わってもらう先輩にも連絡入れて、あとでお客さんにも謝罪メールしなきゃ…。」 「だ、大丈夫?」 休んでもやらなきゃいけないことが多くて、心配になったんだけど、 「あ、普通の会社なら、電話連絡しなきゃダメだよね。」 「う、うん。」 「今回はオレが休みってのは、もうみんな知ってるから、開店前の忙しい時間に電話して‘休みます’って伝えたら、‘知ってるっつーの!’って怒られるからね。」 困ったように、ハハハと笑っている。 「担当代わってくれる人も、いつ時間が空くか予測しにくいから、お客さんの情報っていうかリクエストとかも、メールで送っておいて、都合のいいときに確認してもらおうって感じ?」 「そ、そうなんだ。 お客さんにも連絡するの?」 「それはオレが勝手にしてるだけだけど。」 「そうなの?」 美容師さんから、メールなんてちょっと意外。
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