第8章

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「来店したときに、お店からのメールを受けとるってしてくれたお客さんだけだけどね。 来店確認のメールは、みんな送ってて、その時に簡単なメッセージとかつけたりするんだけど。」 「す、すごいね?」 「予約の日時はそのまま来店するってお客さんが多いけど、日にちを変えても、オレに担当させてくれるってお客さんには、迷惑かけちゃうから、謝罪メールしようと思って。」 「そっか…。」 髪を切るって、毎日することじゃないし、人によっては年に数回のことかもしれない。 だけど、希望により近い仕上がりにしてもらえたら、すごく嬉しいし、美容室へ行った日だけじゃなくて、その次の日も、次の次の日も、髪を見るたび触れるたびに、楽しくなる。 そして、またその美容師さんにお願いしたいって思うなぁ。 「でも、店のパソコンからじゃないと送受信できないから、どうしようか考え中だけどね。」 「ふふふ。」 「ん?」 一生懸命なカズマも好きだなぁ。 「待ってくれるお客さんのためにも、今はまず体調を整えることを最優先にしようよ?」 「そうだね。」 ぎゅうっと腕に力がこもる。 ドキドキと、安心で、背中も心も温かい。 こんな風に感じたことって、今までなかったかもしれない。 「病院行こうか?」 「うん。 あ、でもオレひとりで行けるから大丈夫だよ。」 「…でも。」 「昨日の夜中には、たぶん熱下がってる。 今ちゃんと熱測るから。」 「体温計持ってくるね。」 「ありがと。」 体温計を持って部屋へ戻ると、カズマは布団からシーツをはずしてまとめている。 「私やるよ。」 「布団って意外と力仕事なんだから、大丈夫だよ。」 「病み上がりっていうか、まだ病人だよ?」 「平気、平気。」 「体温計持ってきたから、熱測って!」 しぶしぶと言わんばかりに、体温計を受け取ってくれた。
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