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「コレ飲んだら、私も帰ろうかな。」
ビールのグラスを、軽く持ち上げる。
「え?もう?」
「明日も仕事だし。
って、それはカズマも同じかぁ。」
「あと少しで、店は落ち着くから、待っててくれないの?」
「邪魔になると、悪いからさ。」
「邪魔じゃない!
だから、お願い。」
「…そう?
居るのは全然、私は楽しいんだけど。」
「じゃあ、居てよ。」
「そ、その言い方止めて。」
「ははは、手伝いしてくる。」
「がんばって。」
カズマを見送る。
もう一度、ケータイを確認するけれど着信はない。
ため息をひとつ吐き出して、ビールを飲み込む。
家に帰っても、シャワーを浴びて寝るくらいしか、することはない。
だから少しでも長く、ここに居たいと思っているのは事実で…。
隣の町に実家があって、そこで生まれ育った。
だけど、商店街が並ぶこの街がすごく好きで、就職も商店街がその近くがいいと思っていた。
念願叶って、無事就職をすると、今度はこの街に住みたくなった。
初めての一人暮らしは、期待ばかりが膨らんで、現実に気づいたときにはちょっとヘコみもした。
可愛くて広い部屋は家賃が高いとか、毎日の自炊は楽しいばかりじゃなくて、買い物なんて案外地味な作業だと思ったり…。
それでも、1DKの私の家はそれなりに気に入っているし、居心地もいい。
とはいえ、いつまで一人で暮らすのかと、不安になることもないわけじゃない。
彼がいるといっても、男の人は27歳なんてまだまだこれからで、結婚なんかで縛られたくはないと思っているのかもしれない。
だけど、友達はどんどん結婚をして、子供も産まれたとよく聞くようになった。
‘おめでとう’よりも、‘羨ましい’と思ってしまう。
「ハナちゃん?
眉間にシワ…。」
大きめのグラスに、氷たっぷりの水割り焼酎を入れてきたらしいカズマが隣に座った。
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