第8章

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「シャワー?」 「シャワー。」 「もう、お風呂にゆっくり入ってもらおうと思って準備してたのに。 寝ちゃっててごめん、。」 「え、そうだったの? 嬉しい。ありがと。」 「お風呂入れてないのに。」 「そうだけど、いいの。 あ、ハナちゃんお腹空いてない? なにか作ろっか?」 立ち上がろうとするカズマを押さえる。 「ダメ。私が準備する。 ずっと寝てろとは言わないけど、仕事はダメ!」 「う…。」 「掛けてくれてありがと。」 ジャケットと毛布をたたみながら、冷蔵庫の中に入ってるものを思い浮かべる。 うどんを買っておいたから、それにしようかな。 ネギたっぷりで、卵も落とそう。 温かい食事って、ホッとするから好きだなぁ。 「おいしい!」 「良かった。」 自分が作ったご飯を、おいしいって食べてくれる人がいるって、本当に幸せだなぁ。 たまに、だからそう思うのかな。 これが、毎日毎日朝昼晩と続くとなれば、ツラい日もあるよね。 せっかく作ったのに”外で食べる”って、サラッと言われたら、イラっとするのは当たり前のことかもしれない。 私もお母さんに何度そんなことを言ったかな。 うん、反省しよう。 「ハナちゃんは今日は出掛けたりしないの?」 ハフハフとうどんをすする合間に、カズマが顔をあげる。 「考えてなかったけど…。」 さっきカズマがまとめた本や雑誌が目に入る。 もしかして、仕事するのに邪魔になる? 「で、出掛けようかな…。」 「…ストップ。」 「え?」 カズマの眉間にシワがよる。 「誤解してる?」 「え?」 「邪魔にされてるなんて、思わないでね?」 驚いて、目を見開いてしまう。 思ったことが知らぬうちに、声に出ていたのか、はたまたカズマが心を読んだのか…。 「ほら、やっぱり思ったんだ。」
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