第8章

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居間にありったけの毛布を集めて、冷えないようにモコモコに着込んで、温かいお茶を飲む。 時々ウトウトうたた寝をして、雑誌を眺めたり、他愛もない話をしてはおやつを食べる。 すっかりぐうたらしきったところに、翔太が帰ってきた。 「うわ、すげぇ堕落っぽい。」 居間に入るなり、翔太が呆れた顔をする。 「翔太も一緒にぐうたらする?」 「遠慮しとく。 飯、持ってきた。」 手に提げていた袋をスッと掲げた。 「ありがとう。」 「煮魚とポテトサラダだけどね。」 「おいしそう! 少し片付けて、ご飯の支度しよっか。」 立ち上がろうとしたところを、止められた。 翔太は苦笑いしながら、私の横を指差す。 「カズマ、寝てるよ?」 「へ?」 隣を見ると、スヤスヤ心地よさそうな寝息を立てている。 全然気づかなかった。 そっと動こうとしたら、翔太に止められた。 「バカズマうるさいから、そのまま寝せといて。」 「う、うん。」 翔太はそのまま台所へ向かった。 トン、と肩にカズマの頭が乗る。 心地よい重みと、サラサラの髪の毛がふわふわでくすぐったい。 「ぐー…。」 「カズマ、起きてるじゃん。」 「ぐー。」 「バレてますよー。」 毛布の中で、手を繋がれた。 カズマにとっては些細な行動かもしれないけれど、私にとっては、むちゃくちゃドキドキする。 「もー…。」 仕方ないなぁ、なんて結局カズマのペースにハマってしまう。 「こたつ欲しいね。」 寝たフリは諦めたのか、カズマが呟く。 「欲しいけど、家っていうかこたつから出たくなくなりそう。」 「翔太の家のこたつは、あれはもう逃れられないやつだな。」 「そういえば、翔太の弟くんたちと一緒に勉強してたんだって?」 「ああ、ちょうどいい感じで集中できるから。」 「そうなの?」
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