第9章

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「かしこまりました。」 注文票を確認して、クッキーを袋に詰めてお渡しする。 「こちら、どうぞ。」 「ありがとうございます。」 姪っこちゃん、クッキー好きだって言ってくれてたなぁ。 「あの、お元気でしたか?」 「は、はい。 濱田さんも、お元気そうで…。」 「ちょっとへこんだ時期もありましたけど。」 チラリとこちらを見て、ちょっと意地悪な笑顔を見せた。 「あ、あの…。」 なんて答えたらいいのか… 「なーんて、冗談です。」 初めて見るその表情が、前よりもすごく魅力的に思えた。 「クリスマスは、姪にケーキを渡すだけで、予定はないんですけどね。」 「え、っと…。」 「あ、違いますよ! そういう意味ではなくて…。」 さっきとは別人のように焦り出すから、思わず一緒に笑ってしまった。 「一華さんにまたお会いできて、嬉しかったです。」 「こ、こちらこそ…。」 「変わらずに接してもらえて、ホッとしました。」 「い、いえ。」 「またクッキー買いにお店にも伺いますね。 では、よろしくお願いします。」 「は、はい。 お待ちしてます! ありがとうございました!」 濱田さんの後ろ姿を見送る。 「なんか雰囲気変わりましたね?」 「そうだね。」 「お店に来てた時は、頼りなさそうにも見えてましたけど。 うん、ちょっといいかもですね?」 「へ?」 「一華先輩は、競争社会には向いてないように気がします。」 「ははは、それは自覚してます。」 「でも、優しい彼氏さんがいるんだから、羨ましいです。」 「い、いや、そんな…。」 こういう時に、どう答えればいいのかわからない。 「オレも、こんなに可愛い彼女がいて、幸せです。」 まみちゃんが笑いをこらえながら、私の後ろを見ている。 それに、この声は、 「カズマ!?」 「ハナちゃん、まみちゃん、お疲れさま。」
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