第9章

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カズマの隣には、ふわふわしたパーマがよく似合う男の子が立っている。 「噂の彼女さんですか?」 「う!?」 噂ってなに? 「ハナちゃん、冷えてる!」 急に手を掴むから、慌てる。 「な、な!」 「一華先輩、単語しか発してないですよ?」 まみちゃんが笑う。 「カズマ先輩の、後輩させてもらってます! 野村といいます!」 丁寧に挨拶してくれてはいるものの、カズマ先輩の後輩させてもらってるって、ちょっと可愛いな。 微笑ましい気持ちになる。 「こちら、ハナちゃん。 半径3メートル以内に近づかないで。」 相変わらずカズマはむちゃくちゃだし。 野村くんに頭をさげつつ、 「カズマなにしてんの?」 「昼休憩。」 「そうなんだ。」 「ってか、マジで冷えてて心配なんだけど。」 「大丈夫だよ。 毎年のことだし。」 寒いって言っても、どうにもならない。 「でも!」 「カズマも野村くんも、休憩しないと時間になっちゃうよ?」 「そ、そうだけど…。」 「ほらほら、さっさとよけて? お客さんこないと困るから!」 「う…。」 しぶしぶカズマが離れていく。 ちょっとホッとしたところで、 「ほんっと、ラブラブですね。」 まみちゃんにニヤニヤされてしまった。 「違うから。」 注文票を整理して、そろそろ私たちも一旦休憩に戻ろうかと準備をしていると、 「ハナちゃん!!」 カズマがダッシュで戻ってきた。 「な、なにしてんの?」 息を切らしながら、ふわりと温かいなにかを肩にかけられた。 「??」 「ベンチコート。 サッカーの選手とか、よく着てるじゃん? あったかいから、着てて!」 見栄えは目をつぶるとして、外側はツルツルの雨を弾きそうな素材で、風も通さなそう。 そして内側は、モコモコしていて温かい!
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