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「はい!」
朝礼で挨拶を済ませて、準備に取りかかる。
カズマもカズマで忙しそうだったけど、なにより私がいっぱいいっぱいになってきていて、すれ違いの生活になっている。
付き合って初めてのクリスマスって、もっと浮かれたもんじゃなかったっけ?
なんて、ぼんやり思ってみるものの、実際にはそんな余裕なんてない。
「一華先輩、これ、ないんですけど!」
「ん?見せて?」
注文票が間違えてる。
予備の分のケーキを渡す。
せっかくたくさんのお客様が来店してくれているのに、流れ作業のようになってしまうのが、毎年なんだか切なくなる。
「一華先輩、詰め合わせのご注文のお客様お願いできますか?」
「はーい。」
「クッキーの補充、まだですか?」
裏ではバタバタしていて、まさにてんてこ舞いだ。
包装紙の追加を取りに行くと、ヘロヘロになっているミユキが、ケーキを運んでいた。
「ファイトー?」
「さすが、一華。
まだ余裕ありそうだね?」
「もちろん!
手足りなかったら手伝うから、声かけて!」
「ありがと。
なんとか、がんばる!」
「お願いしまーす。」
余裕なんて、ない。
だけど、ここで私がヘバるわけにはいかない。
ひとつひとつのケーキが、笑顔のお客様の元へ届く。
やっぱり嬉しいな。
強がりとは裏腹に、残り少ない体力を振り絞って、なんとか閉店の時間になった。
引き渡しは明日もあるけれど、今日ほどの忙しさにはならないだろう。
後輩たちを先に帰して、ミユキと店長と閉店後の作業を進める。
「一華、大丈夫?」
「うん。
ミユキこそ、ツラいんじゃないの?」
「そりゃ、ツラいけど。
接客してるわけじゃないから。」
「接客は疲れないよ?
なーんて。」
「無理しちゃって!」
「あはは、バレた?」
「少年とは、パーティーするの?」
「へ?」
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