第9章

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「へ?って。 ラブラブでパーティーするんじゃないの?」 「まさか。 カズマも忙しいみたいだし、すっかりすれ違いの生活してるよ?」 「うわー。 少年どうした?」 「どうもしないよ。」 注文票の整理を終えて、店の備品を補充する。 売り上げのことは、店長にお任せして、帰る支度をする。 「私まだ事務仕事するから、一華は早く帰るんだよ?」 「すみません…。 お先に失礼します。」 「お疲れ~!」 ミユキと、店長にも見送られて、店を出た。 駅前にはイルミネーションが光っているし、商店街もツリーが並んでいる。 家に着くと、空腹よりも眠気に襲われて、着替えもせずに、敷きっぱなしの布団に寝転んだ。 少しのつもりが、深く深く眠りに落ちてしまった。 アラームに気づいて、手を伸ばす。 カサリと、何かが手に触れる。 「…?」 寝ぼけた頭で、掴んだものを目の前に引き寄せる。 赤いチェックの包み紙? なんだろう…。 むくりと起き上がって、リボンを外して包みを開くと、中には箱が…。 パカッと開けると、小さなハートにキラリと光る石がついた、可愛らしいピアスが…。 「!??」 「サンタより。」 って、カズマの文字のメッセージカードが添えてあった。 クリスマスプレゼントが、枕元に…なんて。 子どもの頃以来だよ。 だけど、なんだかすごく…嬉しい。 箱をそっと胸に抱く。 …私、カズマになにもしてあげてないのに。 カズマはいつも周りの人のことばかり、考えてるんだから…。 お礼も言いたいし、カズマにも会いたいけれど、ダメだ。 時間がない…。 仕方なく起き上がって、着替えとタオルを持ってお風呂場へ向かう。 途中、台所に朝ごはんと、翔太からのメモを発見した。 「ちゃんと食べてね?」 そう書いてある。 心配かけてるなぁ…。
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