第9章

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「で、でも私! なにも用意してなくて…。」 「じゃあさ、」 「??」 クルリと向き合わされたと思ったら、ふわりとカズマの甘い香りが近づいてきて、そっと唇が重なった。 「!??」 「プレゼント、ありがと。」 カズマは、ニッコリ微笑んだ。 「こ、こんなところで!?」 誰が見てるかわからないのに!! 「大丈夫、大丈夫!」 「大丈夫じゃないッッ!」 「じゃあ、家に帰って、やり直し?」 「そ、そうじゃなくて!」 「ハナちゃん、お腹減ってない?」 「大将のところへ寄る?」 「ううん、家に帰ろ? なんか作るよ。 それで、早く休んで? 休みはまだ先でしょ?」 「…うん。」 カズマの指が優しく絡まる。 そっと、手を引かれて歩き出す。 慌ただしく毎日が過ぎていたのに、カズマに会えた途端に、ホッと落ち着いたのはなぜだろう。 家に着くと、 「おかえり。」 「翔太!ただいま。」 「ご飯用意しといた。」 「ありがとう。」 「朝も全然食べてなかったでしょ?」 「ははは。」 ほらほら、と、カズマに背中を押されて居間のテーブルの前に座らされる。 カズマが、温かいおしぼりと、冷たいビールを運んできてくれた。 「カズマと翔太も一緒に飲もうよ?」 「ごめん、俺大将の店に戻るから。 帰り遅いと思うから、先に休んでね。」 翔太は上着を羽織りながら言う。 「カズマは?」 「俺は今日は休みもらったから。 ハナちゃん一緒に食べよ?」 「バカっプルで、どうぞ楽しんで~!」 翔太は出掛けていった。 「翔太ご飯の準備に、わざわざ戻ってくれたの?」 「半々?」 「カズマも仕事忙しかったんじゃないの?」 「そこそこ。」 「疲れてるでしょ?」 「大丈夫、大丈夫。 今日は、ハナちゃんがゆっくり休んで?」 「でも…。」 「お願い。」 そんな、可愛い顔で言われたら、断れないよ…。
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