第9章

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「翔太、寝ちゃう?」 一応声をかけると、ゆっくり目を開けた。 「寝かせとけばいいのにー。」 カズマはブーブー言いながら、お刺身に箸を伸ばす。 「もうちょい、起きてようかな。」 翔太がビールに手を伸ばすから、思わず缶を回収する。 「一旦、お水にしよう!」 台所へ戻って、冷蔵庫からミネラルウォーターを持ってくる。 「ハナさん、ごめん。」 「いいの、いいの。 翔太も忙しくて疲れたでしょ? 酔い回るよ。」 翔太はゴクゴクお水を飲んだ。 「…疲れた。」 ポツリと呟く声が、耳に残る。 「なんか、色々疲れた。」 ソファに背をもたれて、翔太が言う。 「疲れていいんだよ? ここでは、強がらなくていいから。 お兄ちゃんじゃなくて、いいんだよ?」 「ハハハ、ありがと。」 弟くんたちの進路のことや、ユキちゃんのこと。 翔太にとっても、悩むことが多かったと思う。 「背負いこみすぎ。」 「カズマに言われたくねーし。」 「じゃ、言われんなよ。」 「うわ、なんかムカつく…。」 「ちょっと!ケンカしないでよ?」 慌てて仲裁に入るけれど、カズマはシレッとご飯を食べているし、翔太も言うほど気にしてないみたい。 「翔太は翔太のペースがあるんだから、周りに合わせすぎないでね?」 「ん、わかった。」 「カズマもね!」 「え?いきなりオレ?」 「そうだよ! カズマはいつも周りのことばっかりで! もっと自分大事にしてよね!」 「してるよ。 オレ、自分中心だから。」 「自信満々に、自己中発言?」 翔太が呆れて笑う。 「したいことは、する。 したくないことは、やらない。 あ、しなきゃないことは、やるけどね。」 「子どもみたい。」 「俺もそう思う。」 「子どもだったら、しなきゃないことも、やらないだろ?」 「いや、子どもだってやるよ。」
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