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ズルい。
なのに、やっぱり断れない。
「…いいけど。」
「じゃあ、寝る準備しよっか!」
「うん。」
順番にシャワーを浴びて、居間でいつもみたいにカズマが髪を乾かしてくれた。
ドライヤーのコードをまとめながら、
「ハナちゃん、試験終わったら、旅行しよ?」
「うん?」
「試験終わったら、少し時間作れる。
ハナちゃんは仕事どう?」
「バレンタインより前か、バレンタインの後ならわりと都合つくと思う。 」
「じゃあ、そのあたりに休み合わせよう。」
「うん。」
「ハナちゃんの布団、運ぼっか。」
「うん。」
居間の電気を消して、階段を上がる。
カズマが小さく、「お邪魔しまーす」と私の部屋に入る。
布団を抱えると、自分の部屋へ向かう。
私も枕や毛布を持って、後を着いていく。
バサバサ布団を敷くカズマを手伝いながら、緊張というか戸惑いというか…。
「ハナちゃん?」
「ん?」
「寝るなら布団に入ってからね?」
「ね、寝てないよ!」
「あはは、そう?」
…カズマは、どう思ってるのだろう。
つき合っていても、毎日ふれ合うわけではないだろうし、積極的にそういうことを望んでいるわけでもない。
でも、カズマは?
もしかして、私にそういうことを、求めているわけではない…?
「オヤスミ。」
布団に潜りこみながら、なんてことを考えているんだろう。
カズマには悟られないように、頭まで布団をかぶる。
「えええ?
ハナちゃん?」
カズマがぐいぐい布団をめくる。
「な、なに?」
「こっち、来ないの?」
自分の布団を指差す。
「い、行かないよ!」
なんとか布団を死守して、顔を隠す。
「やだ。」
「!?」
ぐっと敷布団を引き寄せて、カズマが隣に横になる。
「ハナちゃん。」
「…ぐー。」
「どんな下手な寝たフリ?」
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