第9章

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仕事帰りだって、だいぶ暗いから慣れているけれど、ここで‘うん’って言わないと、翔太は納得してくれなさそうかも。 心配してもらえるって、幸せだなぁ。 こういう時には、素直に甘えてしまおう。 「ありがと。」 「行くとき、途中まで一緒に行こうか。」 「駅と逆だよ?」 「知ってるよ。」 翔太は笑いながら答える。 お雑煮を食べ終えて、出掛ける準備をしながら、一応お兄ちゃんにメールを送る。 ‘実家行くけど、お兄ちゃんも行かない?’ 忙しいかもしれないし、寝ているかもしれないし、もしかしたらスルーされるかもしれないと思っていたのに、すぐに着信が鳴る。 「もしもし?一華? あけましておめでとう。」 「おめでとう。」 「一華が行くなら、おれも行こうかな。 迎えに行くから。どこにいる?」 「家にいるよ。」 「そうか、じゃあ着いたら連絡する。」 「わかった。ありがとう。」 通話を終えて、支度も終えてから、バッグとコートを持って居間へ向かう。 そういえば、バッグもコートもお兄ちゃんが買ってくれたものだから、きっと喜ぶな。 「翔太、お兄ちゃんが迎えに来てくれることになったぁ。」 階段を降りながらそう言うと、玄関に翔太の背中が見えて、その奥には…。 「ユキちゃん?」 翔太の腕を掴む、ユキちゃんがいた。 邪魔しては悪いかと思ったものの、翔太はだんまりで、ユキちゃんは泣いている。 玄関の扉は開け放したままで、外から冷たい空気が流れ込む。 「あのさ、入ってもらったら?」 声をかけると、翔太が振り向く。 「いや、話は終わったから。」 「翔太くんっ!」 ユキちゃんの、悲しげなすがるような声が響く。 「とりあえず、送るから。 上着とってくる。」 淡々とそう言うと、翔太が部屋へ向かった。 「お騒がせして、すみません。」 ユキちゃんが頭を下げた。
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