第9章

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笑える。 だから、きっと大丈夫。 カズマがビールを運んできた。 「私も実家に顔出してきたの。 良かったら、食べて?」 「おいしそう! ハナちゃんのお母さんの料理好き。」 「ありがと。」 お腹いっぱいで帰ってきたはずなのに、まだ食べられるから不思議。 それってきっと、カズマと翔太がいるから。 実家で食べた時とは、また違うおいしさに感じる。 「あ、ハナちゃん、シャワー入ってきたら?」 「へ?」 確かに食べて飲んで、ちょっと落ち着いたところだけど、 「明日から仕事でしょ? 遅くなると面倒になるし、明日の朝にすると、バタバタするじゃん?」 「そうだね。」 「あと、朝シャワー入って出勤すると、風邪引いたら困る。」 「まぁ、朝寒いからね。」 「ここちょっと片しておくから、ほらほら。」 背中を押されるように、お風呂場へ誘導された。 もう面倒になってたけど、この勢いに乗ってしまおう。 シャワーを終えて、肩に提げたタオルで髪を拭きながら居間へ向かおうとして、足が止まる。 「そんな無茶苦茶言うとは思わなかった。」 カズマの声。 「いつも無茶苦茶だったけどな。」 ハハハ、と翔太が笑う。 「このままどこかで暮らすのか、この街に戻るのかは、ユキが決めることだろ? それに、どこかで暮らしたって、この街に来ることはあるだろうから。」 「…。」 「今なら、レンさんの気持ちが少しわかるかも。」 「…。」 「なんとなく、そうなのかな?とは、ずっと思ってたけど、やっぱりそうなのかな。」 「…たぶん。」 「?」 「オレ、頼まれたんだ。」 「なにを?」 「姉ちゃんと、子ども、守れよって。 その次の日から、消息不明になったんだよ。」 「え。」 「でもオレまだバカだったから、なにしていいのか全然わかんなくて。」 「ハハハ、それでケーキ?」
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