第9章

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カズマと翔太の視線が向く。 「子どもに罪はないけど、私は嫌だ。」 「ハナちゃん?」 「妊娠するのは、本当に幸せなことなのに、大人の事情ってやつのせいで、心から祝福できないのは嫌だ。」 「「…。」」 「モトカレって奴は、ちゃんと先に別れを告げてくれたら、そりゃ悲しいけど、お別れしたよ。 それで、そのあとに新しい彼女が出来て、結婚とか妊娠したっていうなら、祝福しようって思えたと思う。」 「「…。」」 「だけどさ、順番がオカシイじゃん? 彼女が妊娠したから、私と別れるって、私はなんだったの?って。」 「ハナちゃん、」 「で、別れたのに、やり直したいとか、ゆくゆくは別れるつもりみたいな! そんなの、子どもに無責任じゃん!」 カズマが宥めようとしてるのはわかったけれど、もう吐き出さずには止まれない。 「ユキちゃんも、ユキちゃんの選んだ道なんだから、どんな思いがあったとしても、飲み込んで堪えて受け入れるしかないよ…。」 「…。」 「だって! 翔太がそうしてるんだから。 自分だけのわがままは、もう通らないよ。 腹くくって、進むしかないんだよ。」 私がわめいても、迷惑なだけだとわかってる。 それでも、私の思いは私のもので、思いも生まれてしまってら、もう無しには出来ない。 「ハナちゃん。」 カズマに抱きよせられて、胸が痛くなる。 苦しくて、痛くて、なのにものすごく安心した。 「翔太、ごめん。」 翔太は別れを選んだけれど、決してユキちゃんが嫌いになったからじゃないと思う。 一度でも好きになった人を、心から恨んで嫌って憎んで、別れるって本当にツラいことだと思う。 だけどそれだって、相手ととことん向き合っうってことだから、私は悪いとは思えない。 「ハナさんは悪くないよ? だから、謝らないで。」 「でも、」 ユキちゃんを悪く言った。
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