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カズマと翔太の視線が向く。
「子どもに罪はないけど、私は嫌だ。」
「ハナちゃん?」
「妊娠するのは、本当に幸せなことなのに、大人の事情ってやつのせいで、心から祝福できないのは嫌だ。」
「「…。」」
「モトカレって奴は、ちゃんと先に別れを告げてくれたら、そりゃ悲しいけど、お別れしたよ。
それで、そのあとに新しい彼女が出来て、結婚とか妊娠したっていうなら、祝福しようって思えたと思う。」
「「…。」」
「だけどさ、順番がオカシイじゃん?
彼女が妊娠したから、私と別れるって、私はなんだったの?って。」
「ハナちゃん、」
「で、別れたのに、やり直したいとか、ゆくゆくは別れるつもりみたいな!
そんなの、子どもに無責任じゃん!」
カズマが宥めようとしてるのはわかったけれど、もう吐き出さずには止まれない。
「ユキちゃんも、ユキちゃんの選んだ道なんだから、どんな思いがあったとしても、飲み込んで堪えて受け入れるしかないよ…。」
「…。」
「だって!
翔太がそうしてるんだから。
自分だけのわがままは、もう通らないよ。
腹くくって、進むしかないんだよ。」
私がわめいても、迷惑なだけだとわかってる。
それでも、私の思いは私のもので、思いも生まれてしまってら、もう無しには出来ない。
「ハナちゃん。」
カズマに抱きよせられて、胸が痛くなる。
苦しくて、痛くて、なのにものすごく安心した。
「翔太、ごめん。」
翔太は別れを選んだけれど、決してユキちゃんが嫌いになったからじゃないと思う。
一度でも好きになった人を、心から恨んで嫌って憎んで、別れるって本当にツラいことだと思う。
だけどそれだって、相手ととことん向き合っうってことだから、私は悪いとは思えない。
「ハナさんは悪くないよ?
だから、謝らないで。」
「でも、」
ユキちゃんを悪く言った。
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