第9章

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忙しくてカレンダーのことになんて、気づいてなかった。 「順番に休みのはずだから、週末には休みがあったはず。」 みんなに休みの調整をしてもらうようになってから、シフト決めが少し楽にはなったけれど、こういう時期に積極的に自分から休むわけにはいかない。 「週末ならオレも少し早めに仕事終われるかもしれないから、一緒にカレンダー買いに行こう?」 「うん。」 そう答えつつ、ふと思い出す。 「そういえば、翔太のお店のカレンダーもらってなかったっけ?」 「そんなこと言うなら、うちの美容室と居酒屋の分もあるけど?」 カズマが笑いながら言う。 「じゃあ、それ3枚並べて貼っておいたらいいんじゃない?」 「えー、やだよ。」 「そんなことないよ!」 身体を少し横にずらして、後ろを振り返ると、カズマと目が合って笑った。 「ハナちゃんのとこは、カレンダー作ってないんだ?」 どうやら商店街では、あちらでもこちらでもカレンダーを作って配っているらしい。 「何年か前に、卓上カレンダーを作ったことはあったみたいだけど、そんなに評判良くなくて。」 「ははは。 まあ、うちも居酒屋のはそれなりに余るから、全部リョウのお絵描き用。」 「あはは、そうなの? でもちょっと贅沢だね?」 「お絵描き帳よりは高いかも?」 そう言って笑った。 「そういえば、カレンダーもレンさんの会社に頼んでるんだよ。」 「そうなんだ。 お兄ちゃんも手伝ってるのかな?」 「手伝うってレベルじゃないんじゃない?」 「ん?」 「レンさんの代理で仕事してるよ。」 「え、っと?」 「肩書きはどうなってるのかわからないけど、言うなら副社長ってところじゃない?」 「へ?」 「結構忙しいみたいだよ。」 「そうなんだ。 って、今日お兄ちゃんも一緒に実家に行ってきたんだ。」 「そうだったんだ。」
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