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「昔から、お兄ちゃんの仕事のことって聞いたことがなくて。
ただ転職は多いし、離婚も多くて…。
適当な人だと思ってた。」
「そうなの?」
「うん。
金銭感覚もちょっとおかしくなっちゃってて、この前偶然会ったときも、断ったのに寒そうだからってコート買ってくれて、その後にも急にバッグ買いたいって、駅前のデパートの並びにあるお店に入っちゃうから、焦ったよ。」
「あ、あのまあるいバッグ?」
「そう。
可愛くて、つい使っちゃうんだけど。」
「ハナちゃんに似合うなぁって思ってたよ。」
「ありがと。
ついでに、お揃いのストラップまで…。」
「それは彰人さんに自慢された。」
「えええ?」
苦笑いしてる。
「ごめんね。」
「え?」
「ハナちゃんと一緒にいられて、それだけでめちゃくちゃ嬉しくて。
だけど、オレ自分のことばっかりで、ごめんね。」
「な、なに言ってるの!」
「?」
「カズマは周りのことばっかりで、もっと自分のこと考えてくれたら…って思ってるよ?」
「え?」
「だから、気にしなくていいんだよ。」
「ハナちゃん。」
「カズマと一緒にいられて、楽しいよ?」
「…ありがと。」
ぬくもりが、幸せだ。
離れると少しさみしいけれど、心はいつでも温かいから大丈夫。
変えれる場所があるから、がんばれるんだ。
「旅行、どこに行きたいか考えておいて?」
「うん。」
「さぁて、オレらも寝ようか。
明日も仕事がんばるぞー。」
「あはは、そうだね。」
カズマの身体が離れてしまったのが、名残惜しかった…なんて言えないけど。
片付けをして、寝る準備をして…一緒に階段をのぼって、部屋の前。
「おやすみ。」
そう言うけれど、一緒にいたいな。
「おやすみ。」
ニコニコしながらそう言うカズマの服の裾を掴む。
「ハナちゃん?」
「…。」
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