第9章

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「一華先輩は、カズマさんと初詣行ったんですか?」 念入りにガラスケースを拭いていると、クッキーの入ったかごを持っているまみちゃんが隣に立った。 「仕事だから、まだ行ってないよ。」 「そうなんですか?」 「初詣に着物って人も多いでしょ?」 「あ、着付けやってるんですね。 一華先輩も着付けてもらっちゃえばいいじゃないですかぁ。」 「へ?」 思ったより大きな声が出てしまった。 すぐに周りにいた子達も反応する。 「なになに?」 「一華先輩が、カズマさんに着付けてもらえばいいのにって。」 「それいいですね!」 「乱れちゃっても、直してもらえますね~?」 「は!? もう、なに言ってるの! し、仕事しよう!」 「あー、一華先輩赤くなってますよ?」 「可愛い~!」 「か、開店まで時間ないよ!」 「はぁ~い。」 それぞれ持ち場へ戻るけれど、ホントなに言っちゃってるんだか…。 添い寝の時といい、みんなの発想には驚く。 変なこと言われて…頬が、熱い。 お店が開くと、途切れることなくお客様が来店する。 お正月早々にお菓子?なんて思われることもあるけれど、年始のご挨拶に持っていく為に、小さな詰め合わせを買い求めるお客様は多い。 手頃な価格の詰め合わせが足りなくなりそうで、追加の準備をする。 「バタバタしてんね。」 裏で箱を並べていると、ミユキが隣に立った。 慣れた手つきで、クッキーを詰めていく。 私はしおりを半分に折りながら、箱に詰められたクッキーの袋の上に置く。 「ありがと。」 「事務所はそんなに忙しくないからね。」 「そうなんだ。」 「年越しは楽しかった?」 ミユキまでニヤニヤしてるよ。 「うん。 カズマと翔太とのんびりしたよ。 って言っても、カズマは仕事遅かったし、1日も仕事だったけど。」 「そうなんだ。」
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