第9章

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「それより、新婚さんのお正月はどうなの?」 「うーん、お互いの実家に顔出して、初詣行ってってくらい?」 「ふーん?」 穏やかで幸せそうだなぁ。 「そういえば、年末の福引きで当たったんだけど。」 「なにが当たったの?」 話ながらも、私もミユキも素早く手は動き続ける。 「温泉ペア宿泊券。」 「おおお!すごいじゃん!」 「休み合わせて、行かない?」 「へ?」 「たまにふたりで、ゆっくりどぉ?」 ミユキがニヤリと笑う。 「旦那さまと行かなくていいの?」 「それはそれとして、このところ休みもなかなか合わないし、まして旅行なんて久しく行ってないじゃん? 一華が良ければ、だけど?」 忙しいのはわかっているけれど、手が止まる。 「…ミユキ~!」 思わず抱きつきたくなって、両腕を伸ばしたけれど、アッサリ拒否された。 「オッケーってことね。 今月ちょうど休み同じところがあったから、その日ってことで予約入れとく。」 「ありがとう。 すごく嬉しい!」 「はいはい、手は動かす!」 「はい!」 楽しみだなぁ。 ウキウキしながら、包み終えた詰め合わせを売り場へ運ぶ。 忙しいと言っても、クリスマスの時とは違って休憩を取る余裕もある。 今日は大将のお店に寄ろうかな。 詰め合わせをひとつ買っておこう。 亮太郎くんはいるのかな。 クッキーは好きかなぁ。 あっという間に仕事を終えて、大将のお店へ向かう。 「こんばんは。」 お店の戸を開けると、 「ハナちゃん、いらっしゃい!」 「今年もよろしくお願いします。 これ、少しですが…。」 詰め合わせの入った紙袋を渡す。 「気使わなくていいのに! ありがとう。」 「ハナさん、お疲れさま。」 奥から翔太が出てきた。 手伝っていることはわかっていても、まだちょっと慣れない。
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