第9章

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もともと翔太も手伝っていることもあったけれど、それともちょっと違う。 「小上がりに、リョウいるんだ。」 「そうなの!」 ちょうど良かった。 小上がりをのぞくと、亮太郎くんが壁に背中をもたれて、図鑑を開いている。 「こんばんは。」 そっと声をかけると、ゆっくりこっちを向いた。 「お姉ちゃん!」 「隣、いいかな?」 「うん!」 嬉しそうに笑ってくれた。 コートを脱いで隣に座る。 「図鑑読んでたの?」 「うん。 これ、カズマがくれた。」 表紙をこちらに向けてくれる。 あ、カズマと一緒に選んだ図鑑だ。 喜んでくれて、良かった。 「そうなんだ。」 笑みがこぼれる。 「いろんなのがたくさん載ってて、面白いの!」 「そっか。 一緒に見てもいい?」 「うん!」 亮太郎くんが、開いたページを指差しながら説明をしてくれる。 抱きしめちゃいたいくらい、可愛いなぁ。 「ハナさん、ビールでいい?」 ひょこっと顔を出した翔太が言う。 「あ、え、っと。」 亮太郎くんもいるから、ウーロン茶にしようかと迷っていると、 「お姉ちゃん、お仕事してきたんでしょ?」 「うん、そうだよ。」 「それじゃあ、がんばったお疲れさまの、ビールだね。」 「へ?」 「ママがいつも言ってるから。」 か、可愛すぎる!! 「リョウ、そうだな。 じゃ、ビール持ってくる。」 翔太がニヤリと笑う。 「あ、ありがと。 そうだ!」 もうひとつの紙袋を忘れてた。 「亮太郎くん、クッキー好きかな?」 「すき!」 「これ、良かったら食べて?」 紙袋を渡す。 「?」 不思議そうに首をかしげながら、紙袋の中をのぞいている。 「うわぁ! 雪だるまのクッキー! 大きい!」 冬限定の雪だるまクッキーは、クリスマスの時の予約特典と、形が違うだけで同じだから人気がある。
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