第9章

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「ふたつもあるよ!?」 「亮太郎くんと、ママの分だよ?」 「うわぁ! ありがとう!!」 喜んでもらえて、良かったな。 「ハナちゃん、ありがとうね。」 大将がビールを運んできてくれた。 「喜んでもらえて、嬉しいです。」 それから、亮太郎くんの図鑑の説明を聞きながら、ご飯を食べる。 もちろんビールもおいしくて、楽しい。 「ただいまー!」 お店の戸がガラリと開いて、よく通る声が響く。 「ママだ!」 亮太郎くんが勢いよく立ち上がる。 「裏から入れって言ってるだろう!」 大将の声が聞こえる。 …カズマと同じ。 思わず笑ってしまいそう。 「リョウ、ただいま!」 太陽みたいな笑顔で大きく両手を広げて、駆け寄る亮太郎くんを、ギュッと抱きしめている。 「ママおかえりー! あのね、あのね、」 まだまだ抱きしめていたいらしい涼子さんの腕の中から、亮太郎くんは早くももぞもぞと抜け出している。 「ハナちゃん、いらっしゃい! リョウの相手してくれて、ありがとう!」 「いえ、」 「これ! お姉ちゃんくれたの! リョウのと、ママの!」 雪だるまクッキーをふたつ、持っている。 「おっきい!可愛い! ハナちゃん、ありがとう!」 涼子さんはそう言いながら、雪だるまクッキーを両手に掲げている亮太郎くんを抱き上げた。 「喜んでもらえて、私も嬉しいです。」 「うわぁ! もうハナちゃんも抱っこしたいわ!」 「涼子さん、うるさい。」 苦笑いしながら、翔太が後ろから言う。 「え? 傷心な翔太も、抱きしめて欲しいって!?」 亮太郎くんをそっと降ろすと、両手を広げてジリジリ近づいていく。 「全く、思ってない。」 翔太は後ずさりしている。 「ほら、泣いていいから!」 「な、泣かないから。」 「意地張らなくてもいいのよ?」
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