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「か、カズマ逃げて。」
「へ?」
「一華、子どもなんてまだ早いからな!?」
「お兄ちゃん、落ち着いてってば。」
「な、何事!?」
焦るお兄ちゃんと、状況が飲み込めずにいるカズマの後ろから、レンさんが近づいてきた。
「アキ、うるさい。」
そう言って、お兄ちゃんの頭をスパーンと叩くと、首根っこを掴むと言うような状態で、カウンターへ連れて行ってくれた。
「一華ちゃん、アキがバカで大変だね。」
「ご迷惑をおかけしてます…。」
レンさんに頭を下げた。
「カズマごめんね。
おかえり。」
「ただいま。
めっちゃ賑やかだね。」
「さっきまで、涼子さんも暴れてたよ。」
翔太が言う。
「ハハハ。
それはオレの手には追えない。」
そう言いながら、着替えてくると奥へ入っていった。
「ハナさん、ビール?
日本酒もあるけど。」
「翔太はまだ働く?」
できれば一緒に飲みたいなぁ、なんて。
「カズマ帰ってきたから、ちょっと休憩しようかな。」
言わんとしていることを察してくれたのか、日本酒を取りに向かった。
「ハナちゃん、ごはん食べた?」
エプロンのヒモを結びながら、カズマが戻ってきた。
「食べたよ。
翔太とちょっと飲んでもいい?」
「えー、オレじゃなくて?」
「な、なに言ってんの?」
不意に、後輩たちの着物の話を思い出してしまった!
顔が熱くなる。
「ハナちゃん、顔赤くない?
熱ある!?」
カズマの手のひらが、おでこに触れる。
急に恥ずかしくなって、更に頬が熱くなるのがわかる。
「カズマー!
図鑑忘れたー!」
可愛い声が近づいてくる。
カズマの手がそっと離れて、ホッとした。
頭から湯気がほわほわ出ていそうなくらい、ほかほかで赤いほっぺたの亮太郎くんが、パジャマ姿で走ってきた。
横に置いてあった図鑑を差し出す。
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