第9章

39/51
前へ
/670ページ
次へ
「か、カズマ逃げて。」 「へ?」 「一華、子どもなんてまだ早いからな!?」 「お兄ちゃん、落ち着いてってば。」 「な、何事!?」 焦るお兄ちゃんと、状況が飲み込めずにいるカズマの後ろから、レンさんが近づいてきた。 「アキ、うるさい。」 そう言って、お兄ちゃんの頭をスパーンと叩くと、首根っこを掴むと言うような状態で、カウンターへ連れて行ってくれた。 「一華ちゃん、アキがバカで大変だね。」 「ご迷惑をおかけしてます…。」 レンさんに頭を下げた。 「カズマごめんね。 おかえり。」 「ただいま。 めっちゃ賑やかだね。」 「さっきまで、涼子さんも暴れてたよ。」 翔太が言う。 「ハハハ。 それはオレの手には追えない。」 そう言いながら、着替えてくると奥へ入っていった。 「ハナさん、ビール? 日本酒もあるけど。」 「翔太はまだ働く?」 できれば一緒に飲みたいなぁ、なんて。 「カズマ帰ってきたから、ちょっと休憩しようかな。」 言わんとしていることを察してくれたのか、日本酒を取りに向かった。 「ハナちゃん、ごはん食べた?」 エプロンのヒモを結びながら、カズマが戻ってきた。 「食べたよ。 翔太とちょっと飲んでもいい?」 「えー、オレじゃなくて?」 「な、なに言ってんの?」 不意に、後輩たちの着物の話を思い出してしまった! 顔が熱くなる。 「ハナちゃん、顔赤くない? 熱ある!?」 カズマの手のひらが、おでこに触れる。 急に恥ずかしくなって、更に頬が熱くなるのがわかる。 「カズマー! 図鑑忘れたー!」 可愛い声が近づいてくる。 カズマの手がそっと離れて、ホッとした。 頭から湯気がほわほわ出ていそうなくらい、ほかほかで赤いほっぺたの亮太郎くんが、パジャマ姿で走ってきた。 横に置いてあった図鑑を差し出す。
/670ページ

最初のコメントを投稿しよう!

514人が本棚に入れています
本棚に追加