第1章

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「私さぁ、最低だよね。」 「どうして?」 布団の上に並んで座って、ベッドに背を預けて、チラリとカズマを見る。 借りた、パーカーとハーフパンツはどっちも大きくて、なんだか落ち着かない。 「きっとケイトくん、女の子と会ってる。」 「…。」 「ポケットに、楽しかった、また一緒にお食事を…って書いたメモが入ってたの。」 「…。」 「そのメモ捨てちゃおうか、それともどういうことか聞こうか迷ったけど、そのままポケットに戻したんだ。」 「…。」 「でもこれからも、そうやって見て見ぬふりをしていかなきゃいけないのかな。 って言いながら、ここにいる私はなんなんだろう…。」 「ハナちゃん、もうやめちゃってよ?」 「…。」 「結婚なんてしないで。」 「…確かめてみる。」 「え?」 「メモのこともだけど、他のことも。」 「…うん。」 「カズマ、ありがと。」 「ううん。 ほら、もう寝た方がいいよ。」 買い置きの歯ブラシを渡されて、洗面所で歯みがきを終えると、廊下でおじさんに会った。 「お、ハナちゃん。」 ニコニコしている。 「お邪魔して、ご迷惑おかけしてます。」 頭を下げた。 「大丈夫、大丈夫。 ゆっくりしてな。」 「ありがとうございます。」 部屋に戻ると、カズマが押し入れを開けてゴソゴソしている。 「なんか隠してんの?」 「わ!びっくりした。 明日の服を取ってたんだよ。」 「カズマ、明日休みなんだよね?」 「うん。」 「じゃあ、まだつきあってよ。 なんだか眠れそうにないの。」 「いいよ。」 押し入れの戸を閉めた。 さっきみたいに並んで座って、膝に布団をかける。 「カズマ、なんか話してよ?」 「えー?オレ?」 「あ、学生の頃は最低に荒れてたんだって?」 「ははは。 毎日つまんなくてさ。 ヒマさえつぶせたら、少しはマシって思ってた。」
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