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「もう!
気にしなくていいのに。
ありがたく、いただきます。」
そう言って受けとると、少しだけホッとした表情になった。
店員さんがカフェオレを運んできて、少しの間の後にユキちゃんが口を開いた。
「聞きましたよね?
私…。」
「うん、聞いた。」
どんな顔をすればいいんだろう。
だけど、今すごく思うのは、あの時思うことを吐き出せて良かった。
もしそうじゃなかったら、私が当事者みたいな気持ちになって、翔太の代わりみたいな間違えた使命感で、話をしてしまったかもしれない。
誰もそんなこと、望んでないのに。
「なんであんなこと言っちゃったんだろうって、すごく後悔してます。」
「…そっか。」
「…怒って、ますよね?」
「へ?」
「え?」
怒ったというか、不快に思って、疑問にも思ったけれど、じゃあユキちゃんを怒るかと言われたら…怒らない。
怒るとかそういう立場じゃないよ。
「うーん、本人同士の問題だから…。」
突き放したみたいかな。
どうしたらいいのかわからない自分が、情けない。
「…聞いてもらえますか?」
「う、うん。」
ポツリポツリと、ユキちゃんは話を始めた。
「小さな頃から、ずっとずっと翔太くんのことが好きで、今は色々あったとしても、きっと将来は翔太くんと一緒にいるんだろう、って。
翔太くんの気持ちなんて考えずに、ずっとそう思ってました。」
「…。」
「だけど、離れてる時間が長すぎて、翔太くんのことを忘れていることもありました。」
「…。」
「他の男の子に優しくされて、嬉しかったのも嘘じゃなくて…。
地元に戻りたくないって言っているうちは、自由にしていられるとも思ってました。」
「…。」
「他の男の子と恋しても、それでも翔太くんのところに戻れる、なんて思ってて…。」
「…。」
「けど、そんなの私のわがままでした。」
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