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「翔太くんはどんなわがままでも聞いてくれる、なんていつのまにか思うようになってたんだと思います。
勝手で、最低でした。」
「…。」
「もう翔太くんの元には戻れないって思ったら、どうしようもないくらい、悲しくて苦しくて…。」
勝手なことを言っていると、きっとユキちゃん自身がわかって話しているのだから、私はそれを受け入れて聞くしかできない。
「どうしても翔太くんに会いたくなって、押し掛けました。
だけど、わかってたんです。
わかってて、翔太くんに言わせたんです。
自分じゃ諦められなかったから、最後まで翔太くんの優しさに甘えたんです。」
「…。」
胸が痛い。
「今の彼は、翔太くんのことを思う私を大切にしてくれて。
彼にも甘えているのはわかってるけど、寂しくて耐えられなくて、一人で強くは生きられない…。」
誰よりも強い心で、自分の行く道を決めて、進んでいるように見えたけれど、心に潜めた思いは、万人が気づけるわけじゃない…。
弱さを認めるのは、難しいことだと思う。
でも気づかないフリをしていたって、弱さがナシになるわけじゃない。
「でも、彼と一緒にいようって、思います。」
「そっか。」
「今すぐには無理だけど、いつか思い出に出来たら、この街に帰ってきます。」
「…え?」
「戻ることも考えたんですが、お店はお兄ちゃんがいるし、翔太くんの存在を感じる場所で、翔太くんのことを忘れられる自信はありません。」
「だから、いつか。
懐かしい思い出だと笑って話せるようになったときに、堂々と帰れるように…。」
そう言って、弱々しく微笑んだ瞳から、涙が落ちた。
「勝手なことばかりなのに、聞いてくれてありがとうございました。」
「…ううん。
話を聞かせてくれて、ありがとう。」
言ってしまったことも、起こした出来事も、ナシにはできない。
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