第9章

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「翔太くんはどんなわがままでも聞いてくれる、なんていつのまにか思うようになってたんだと思います。 勝手で、最低でした。」 「…。」 「もう翔太くんの元には戻れないって思ったら、どうしようもないくらい、悲しくて苦しくて…。」 勝手なことを言っていると、きっとユキちゃん自身がわかって話しているのだから、私はそれを受け入れて聞くしかできない。 「どうしても翔太くんに会いたくなって、押し掛けました。 だけど、わかってたんです。 わかってて、翔太くんに言わせたんです。 自分じゃ諦められなかったから、最後まで翔太くんの優しさに甘えたんです。」 「…。」 胸が痛い。 「今の彼は、翔太くんのことを思う私を大切にしてくれて。 彼にも甘えているのはわかってるけど、寂しくて耐えられなくて、一人で強くは生きられない…。」 誰よりも強い心で、自分の行く道を決めて、進んでいるように見えたけれど、心に潜めた思いは、万人が気づけるわけじゃない…。 弱さを認めるのは、難しいことだと思う。 でも気づかないフリをしていたって、弱さがナシになるわけじゃない。 「でも、彼と一緒にいようって、思います。」 「そっか。」 「今すぐには無理だけど、いつか思い出に出来たら、この街に帰ってきます。」 「…え?」 「戻ることも考えたんですが、お店はお兄ちゃんがいるし、翔太くんの存在を感じる場所で、翔太くんのことを忘れられる自信はありません。」 「だから、いつか。 懐かしい思い出だと笑って話せるようになったときに、堂々と帰れるように…。」 そう言って、弱々しく微笑んだ瞳から、涙が落ちた。 「勝手なことばかりなのに、聞いてくれてありがとうございました。」 「…ううん。 話を聞かせてくれて、ありがとう。」 言ってしまったことも、起こした出来事も、ナシにはできない。
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