第9章

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だけど、間違えたらやり直したり、考え直したり、迷って後悔することもたくさんあると思う。 そうすることを、誰にも止める権利なんてない。 正直、私にはわからないことだらけだ。 ひとりの人をずっと思うことも、離ればなれになることも。 別れた相手を恋しいと思うこともないのに、私に言えることなんてないよ。 生きている時間が少し長いだけで、経験していることはそれぞれに違うんだから…。 「私、行きますね。」 ユキちゃんが立ち上がる。 「ごちそうさせてくださいね。」 微笑んで、伝票を手に取った。 「でも…。」 そう言いかけて、飲み込んだ。 「カズマくんと、お幸せに…。」 ペコリと頭を下げて、歩いていく後ろ姿を見つめる。 ユキちゃんが会計を済ませて、カランコロンと店のドアのベルが響く。 「!!」 バッグを掴んで立ち上がる。 店を飛び出して、ユキちゃんの後ろ姿を追う。 「ユキちゃん!!」 「!?」 驚いた表情で振り返る。 「今度は奢らせてね! 幸せになってね!」 言いながら、涙が溢れて堪えきれない。 「ありがとうございます!」 深々と頭を下げてから、小さくなっていく後ろ姿を見送った。 バッグから、もらったハンカチの包みを取り出して、そっと開く。 柔らかい素材のハンカチで、涙を押さえた。 腹括って進むしかない! なんて、偉そうに言ったけど、私が一番わかっていなかったのかもしれない。 進む道を決めたユキちゃんは、強く見えた。 涙を拭いて、ふぅっと息を吐き出す。 私も、私の進む道を見つけたいな。 思ったより早く駅前に来てしまったけれど、このままあちこち見ようかな。 思いつくままに、足を進める。 お昼は、ランチプレートがお手頃価格なカフェに寄った。 雑貨やさんで豆皿を見つけて、思わず微笑んでしまう。 「ハナちゃん!」
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