第9章

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後ろからカズマの声が聞こえて、振り向く。 「お待たせ。」 仕事が終わったと連絡が来たから、本屋さんにいると答えてから、数分で到着したから、大分慌てたんだろうな。 「おつかれさま。」 そんなに急がなくてもいいのに、なんて思うけれど、私も大将の店まで走りたいくらいの時もあるから、わからないわけじゃない。 「どこか見た?」 「大体巡って来ちゃったかな。」 「そっか。」 「でも、本屋さんは見てないから、一緒に見てみよう?」 「うん。」 去年使っていたカレンダーは、可愛かったのだけれど、予定を書き込む欄が少し小さかった。 ひとり分なら、もちろん充分なスペースがあるけれど、3人分の予定が重なるとちょっと足りない。 「ねこ、可愛い。」 「そうだね。 こっちのは?」 可愛いキャラクターのカレンダーを、カズマが手に取る。 「可愛いのたくさんあるね。 けど、書き込む欄がなぁ。」 「そうだね。」 「やっぱり、翔太のお店のカレンダーがちょうどいいんじゃない?」 「やっぱり?」 「うん。 あ、でもこのシール貼ったら可愛くなりそうだから、これは買っちゃおう。」 「そうだね。」 笑顔で手を差し出している。 シールを受けとる気だろうけど、 「買ってくるね。」 「いいよ、オレが…。」 「あ、カズマは旅行の雑誌でも見ててよ?」 「…了解。」 レジを済ませて、雑誌コーナーに向かう。 すっかり見慣れてしまったけれど、髪の色はずっとこのままにするつもりなのかなぁ。 そう思いつつ、カズマの隣に並ぶ。 「こういうところにも、行きたいね。」 開いたページを差し出されて、のぞきこむ。 有名なテーマパークの特集らしい。 「そうだね。 遠くてなかなか行けないよね。」 「だよね。」 雑誌をそっと戻して、どこへともなく足を進める。
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