第9章

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「ユキちゃんも、翔太も、幸せになって欲しいね。」 「そうだな。」 思い出すと、やっぱり少し胸が苦しくなる。 「姉ちゃんも、ゴタゴタしたんだよ。」 「?」 「リョウの父親、たぶんレンさん。」 「!??」 驚いて、ワインを吹き出すところだった。 「姉ちゃん、その時もう結婚は決まってて。 でも旦那さんが、自分の子供だ、って。」 「…。」 「旦那さん、すごく優しい人で。 全部許すし、なにがあっても自分の子供だから、別れたくないって。」 「…。」 「レンさんも、何度も話に来てた。 でも姉ちゃんはレンさんを選ばなかった。」 「…。」 「結婚する時にも、めちゃくちゃモメて、離婚するまでも、相当モメたんだけどね。」 「そうなんだ。」 「レンさんが姉ちゃんを好きなんだろうなってのは、オレにもわかるくらいだったのに。 姉ちゃんは全く気づいてなかったし、年が離れてるから難しかったこともあるのかもしれない。」 「…確かに。 年は離れてるよね。」 私と涼子さんは同じ年で、お兄ちゃんとレンさんも同じ年だから。 「でも、年齢なんて…。」 「年齢なんて、関係ないんだけど。 周りはそうは思わなくて、好奇心とか悪意とか…。」 「…。」 「本人たちが良ければ、ってだけじゃ進めなかったんじゃないかな。」 「カズマ。」 「ん?」 心臓のあたりに手を当てるけれど、心がギュッと苦しい。 「切ない。」 「…うん。」 「苦しいね。」 「うん。」 「あの、さ。」 「?」 「亮太郎くんは、知ってるの?」 「へ?」 「あ、ごめん。 知らないよね。」 「たぶん面と向かって話してはないだろうけど、大人がモメてるの見たり、聞こえてくる話もあっただろうな…。」 「そっか。」 「?」 「お正月に大将のお店に、お兄ちゃんとレンさんが来た時に…。」
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