第9章

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「うん。」 「亮太郎くんが図鑑を取りにきたときに、レンさんの方を見て、ぱぱ?って呟いたように聞こえて…。」 「…。」 「あ、聞き違いかもしれないし、普通に間違えただけかもしれないから…。」 「気、使わせてごめんね。」 困った笑顔を向けられた。 「ううん。」 「リョウはわかってるのかも。」 「?」 「姉ちゃんはなにも言わないけど。 レンさんは気づいてなかったけど、姉ちゃんがレンさんを好きだったのも、バカみたいにわかりやすかったんだよね。」 「…。」 「好き同士でも、タイミングが違えば、一緒にいられないんだって、その時に思った。」 「…。」 「オレが高校生ってだけで、ハナさんにフラれるのは嫌だって思ったけど、ハナさんにカレシってのがいるから、やっぱりフラれるんだって思って、すげぇ苦しかった。」 「??」 「ハナちゃんが結婚するかもってなった時も、どうしていいのかわからないけど、なにもできないって思った。」 「…。」 「おんなじ高校生だったら、なんてどうしようもないことを、何度も何度も考えたよ。」 「…カズマ。」 「誰も不幸になりたいなんて思ってないのに、その時にかみ合った歯車が、自分の意思とは違う方向へ進んでいくこともあるな、って。」 「…。」 「って、それも自分が選んだ道って言えば、それまでなのかもしれないけど。 そんなに切ないものなのかな、って。」 「…。」 「もしかしたら、ハナちゃんのモトカレシってやつと、そのままうまくいった方が、ハナちゃんの幸せに繋がってるのかもしれない…とか?」 「カズマは、その方が良かったって思う?」 「思わないよ。 だけど、ハナちゃんの選択肢は…。」 「私も思わないよ。」 「?」 「あの時、すごくショックだった。 けど一番強く思ったことは、私なにやってたんだろう、って。」 「…。」
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