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「へー…。」
「友だちとか、知り合いはどんどん増えるけど、別になにか楽しいことがあったわけじゃない。」
「そうなの?」
「家の手伝いなんて、面倒だとも思っててさ。
好きなことしたいって思ってたのに、いざ自由になったと思ったら、なんもなかった。」
「…。」
「だけど、親に謝るなんてしたくないとか、家の手伝いはカッコつかないとか、ちっさいことばっか気にしてた。」
「…なにがきっかけで、変わったの?」
「うーん、甥が生まれた時に色々あってさ。
大切な人を守りたいと思った時に、そのチカラがないのは嫌だと思ったんだ。」
「…。」
「母親の店の掃除はよく手伝ってたし、興味もあったから美容師の学校に行かせてもらって、今に至るわけだけど。
居酒屋も好きなんだよね。」
「いつも手伝ってるもんね。」
「うん。
美容室で、キレイにしてもらえたって、喜ばれるのも嬉しいけど、こっちでオレの作ったご飯を喜んで食べてもらえるのも、すげぇ嬉しい。」
「カズマのご飯、おいしいもん。
人を喜ばせるのが好きなんだね。」
「あはは、そうかも。」
「カズマはホント、優しいね。」
「そうだといいけど。
…ねぇ、ハナちゃん。」
「んー?」
カズマの声が心地よく響いて、瞼が重くなる。
お腹がいっぱいになったとか、ホッとしたとか、色んな気持ちが重なって…ちょっと疲れた。
「ハナちゃん、おやすみ。」
遠くでカズマの声が聞こえた気がした。
心も身体もポカポカ温かくて、久しぶりに深く深く眠りに落ちた。
ハッと目が覚める。
アラームは鳴った!?
今は何時?
慌てて手探りで目覚まし時計を探す。
…時計は見つからないし、天井がいつもと違う。
ぼんやりした頭で、昨日のことを思い出す。
昨日!?
ガバッと起き上がる。
ここ、カズマの家だ。
いつの間に寝ちゃったのだろう。
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