第10章

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クリスマスに次ぐイベントといえば、バレンタインだ。 2月に入るとすぐにバレンタイン向けの商品を店頭に並べる。 小さなチョコやクッキーを、好きに詰め合わせることもできるコーナーは、毎年人気がある。 その他にも、たくさんのチョコレートが並ぶ。 「この時期は、ほんっと幸せ。」 「一華先輩、チョコ好きですよね。」 「うん、好き。」 「カズマさんには、手作りするんですか?」 「へ?」 「まさか…また忘れてるわけじゃないですよね?」 まみちゃんの声に気づいた子達が、そっと近づいてきた。 「一華先輩、チョコあげないんですか?」 「しっかりしてください! カズマさん絶対待ってますから!」 「うちの一番いい商品を…。」 「わ、忘れてないって。」 そう答えてみたけれど、考えてなかった。 とは言っても、手作りする自信もないし、たぶん忙しいであろうバレンタインの時期に、慣れないことにチャレンジする勇気も余裕もない。 「カズマさん、去年おっきな紙袋ふたつも抱えてましたよね。」 「バレンタインに合わせて、予約取る人も いるとか聞きましたよ?」 この子たちは、どうしてそんなに色々なことを知っているのかと不思議に思う。 「一華先輩?」 呆気に取られてしまった。 「とりあえず、仕事しよっか。」 「はぁい。」 それぞれ持ち場に戻っていく。 あれ? 去年まではどうしてたんだっけ? 元カレって人には、大きめのチョコの詰め合わせをあげていた。 お父さんは昔から楽しみにしているから、間に合うように郵送の注文をしていた。 去年、去年…。 ぼんやりと思い出したのは、大将のお店に詰め合わせを持っていったこと。 カズマや翔太には、小さいチョコをはいって渡したくらいだったような…。 去年と今では、状況が違うとはいえ、もう少し気を使っても良かったのかもしれない。
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