第10章

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「駅前のデパートでも扱ってますよね?」 「はい。」 「これひとつお願いします。」 「ありがとうございます。 こちらへどうぞ。」 商品を持って、レジへ案内する。 「ご自宅用ですか? プレゼント用ですか?」 そう聞くと、テレた様に微笑んで、 「プレゼント用にお願いします。」 「かしこまりました。」 好きな子へのプレゼントかなぁ。 男の子からチョコを渡すって、可愛くて羨ましいかも。 「…変ですよね。 男なのに、チョコ渡すなんて。」 ポツリと呟くいた。 「そんなことないと思います!!」 力がこもってしまった。 目を真ん丸にして、驚いている。 「ステキだと思います。 きっと喜んでくれますよ!」 だって、こんなに早く買いに来たってことは、どうしてもプレゼントしたいってことだから。 それに、この商品は人気でデパートでは早くに売り切れてしまうらしい。 うちの店では、出来るだけ多く用意しているけれど、それでも閉店間近になると、売り切れてしまう。 「ありがとうございます。」 ニッコリ笑って、帰っていった。 私がクリスマスだけじゃなくて、バレンタインも好きなのは、こんな風にステキな思いのおすそ分けをいただけること。 誰かを思って選ぶって、見ているこちらまで幸せな気持ちになる。 ふわふわした気持ちのまま、家へ帰る。 「ただいまぁ。」 「おかえり。」 「あれ?カズマ! 早いね?」 翔太は大将の店の仕事をしているだろうけれど、カズマが帰っているとは思わなかった。 「試験前だからね。」 「あ!そうか。 え、っと、カツ丼とか作ろうか?」 「あはは。」 「ご飯は?食べた?」 「一緒に食べようと思って、待ってた。」 そう言うと、参考書をパタンと閉じて立ち上がった。 「私やるよ。」 「温めるだけだから、着替えておいで。」 「…ありがとう。」
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