第10章

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「もー! うちの女の子たちは、そういうのばっかりなんだかぁら!」 「だって、イベントってきっかけじゃないですかぁ。」 「…え?」 「穏やかな毎日はもちろん幸せだけど、たまーにそういうイベントで、ドッキドキするから、また穏やかな毎日が幸せに過ごせるんじゃないですか?」 「…深いような、深くないような話だ。」 「えー、ひどいです~!」 「あはは、ごめんごめん。」 でも、わからなくもないな。 って、マミちゃんの言うようなことはしないけど。 閉店の作業を終わらせて、大将の店へ向かう。 「こんばんわー!」 「ハナちゃん、いらっしゃい!」 「大将、これほんの気持ちです。」 チョコの入った紙袋を差し出す。 「ありがとう。」 少し照れたように、にこにこして受け取ってくれた。 「ビールお願いしまぁす。」 「はいよ!」 小上がりに向かうと、先客がいた。 「一華、おかえり。」 「おかえりって、おかしいでしょう。」 まさかとは思ったけれど、予想が的中した。 「はい、バレンタイン。」 「本当に!? くれるのか!?」 「うん。」 「一華~!!」 両手を広げて近づいてくるから、拒否して向かいに座る。 念のため、準備してきて良かった。 「ハナさん、お疲れさま。」 翔太がビールを運んできてくれた。 「ありがとう。 チョコ、翔太の分もあるんだけど、後で渡すね。」 「ありがとう。」 「あ、亮太郎くんはまだ帰ってないかな?」 「まだみたい。」 「それじゃあ、大将にお願いしてこよう。」 亮太郎くんへのチョコを大将に預けていると、 「ただいまぁ。」 カズマが帰ってきた。 「ハナちゃん、おかえり。」 「カズマもおかえり。」 チラリと見ると、両手に紙袋を提げている。 「着替えてくるね。」 奥に入っていった。 小上がりに戻って、ビールを飲む。
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