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「ハナちゃんからのチョコ、ずっと欲しかった。」
「そ、そんな大げさな…。」
「大げさじゃないよ。
嬉しい。ありがとう。」
「ど、どういたしまして。」
「…帰ろうか。」
「うん。」
手を繋いで、店を出た。
歩きながら、やっぱり気になって聞いてしまった。
「たくさんチョコどうするの?」
「姉ちゃんが食べる。」
「そうなの?」
カズマを思って渡した子の気持ちを、どうしても考えてしまう。
…複雑な気持ちにはなるけれど。
「昔から、姉ちゃんが食べてたけど、なんか面倒だなって思ってた時期もあったんだ。
すげぇ嫌な奴でしょ。」
「うーん。」
なんとも言えない。
「勝手に気持ち押し付けて、食べてくれないだの、気持ちに答えてくれないだの、お返しくれないだの、文句まで言われて。」
「…。」
「欲しくないのに、文句言われて、すげぇ面倒だと思ってた。」
「…。」
「女の子だけじゃなくて、男からも、もらえるだけで幸せなのに、贅沢だ!とか文句言われて。
最悪だと思ってた。」
「ははは。」
客観的に考えると、全員の言い分が理解できてしまうから、笑うしかない。
「それなのに、本当に欲しい人からは、明らかに義理ってわかってる小さなチョコをもらうだけでも、むちゃくちゃ嬉しかったんだ。」
「…。」
「チョコもらう時に、家族で食べてもいいですか、って聞いてるから大丈夫。」
カズマがふわりと笑った。
「え?」
「好きな人がいるから、本命だったら受け取れません。
戴いても、家族で食べますけど、いいですか?って。」
「…律儀。」
「ははは。
美容師になってからは、そうしてるから、
家族で食べてー!って渡してくれるお客様が多くて、ありがたいなぁって思ってるよ。」
「…そうだったんた。」
「だから、オレが気持ちごと受けとるのは、ハナちゃんのチョコだけ。」
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