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「な、なに言ってんの!?」
暗くて良かった。
顔が熱い。
気にならないとか言いながら、めちゃくちゃ気にしていた自分も恥ずかしい。
「え、違うの?」
不意に足を止めるから、
「ち、違わないけど…。」
「!!」
繋いだ手を、ぐいっと引き寄せられて、そっと唇が重なった。
「すっげ、幸せだ。」
カズマが呟く。
恥ずかしくて声には出せないけれど、心で私もそう思った。
ゆっくり歩きながら、ふとあの男の子のことをまた思い出す。
「あの子は渡せたのかなぁ。」
「ん?」
「2月に入ってすぐ、人気のチョコを買いに来た可愛い子がいたの。
渡せたのかなぁ、って。」
「そうなんだ。
チョコ買いにくるお客さん、たくさんいるけど覚えてるくらい可愛かったんだ?」
「うん。
カズマくらいの年かなぁ。
スーツ姿で、ちょっと照れてて。」
「うん。」
「男なのにチョコ渡すなんて、おかしいですよね、って言うから、そんなことない!!って思わず熱くなっちゃった。」
「うんうん、って、男!?」
「うん。」
「可愛いっていうから…。」
「ホントに可愛い男の子だったの!」
「…勇気あるね。」
「うん。
って、カズマは買えちゃいそうだけど?」
「いや、勇気いるよ。
すごいと思う。」
「そうだよね。
売り場に近づくのも、男の人なら敬遠したくなるよね。」
「赤とピンクとリボンに囲まれた空間はね…。」
「あはは、確かに。」
「けど、デパートとかのバレンタインコーナーよりは、ハナちゃんの店の方が、他のお菓子買いに来ましたってつもりで、近づきやすいかも。」
「そう?
でも、プレゼント用はもちろんだけど、自分用にも本当は買いたいお客様もいるかもしれないよね。」
「そうだね。」
「来年は、ちょっと考えてみようかな。」
「いいね。」
「うん。」
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