第10章

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仕事を終えてから、ホテルに泊まる案も考えたけれど、すぐ近くのホテルだから、休みの日の午前中に出発することにした。 お昼からお酒を飲んで、ホテルに到着して温泉に入って、休憩でビールを飲んで、また温泉に浸かる。 「あああ、もう幸せ~。」 暗くなってきた頃に、もう何度目かの露天風呂に浸かりながら、ミユキが言う。 「ホントだね。 ゆっくりしてる~って感じ。」 「少年、ヤキモチ焼かなかった?」 「あはは、大丈夫だよ。」 「少年とは、どこに遊びに行くの?」 「どこにしようかなぁ。 家でのんびりっていうのも、捨てがたいよね。」 「やだ、新鮮。 そういうのにも、飽きてくるから。」 「そうなの?」 飽きるほど、家でのんびりできるっていうのも、それはそれでノロケにも聞こえるけど。 「そろそろさぁ、子どももいたらいいなぁって思うようななったんだぁ。」 ううん、と伸びをしながらミユキが言う。 「そうなんだ。」 「けど、そればっかりは、自分の意志ではどうにもならないじゃん?」 「うん。」 欲しいと思って、授かれるわけじゃない。 「だから、私は私で準備したいなぁ、って。」 「妊活、って言われてるような?」 「あはは、そこまで本格的なことでもないけど。」 「?」 「一華とさぁ、高校生の頃からずっと一緒で、職場も一緒で。 すっごく楽しくてさ。」 「うん、私も。」 楽しくて、心強かった。 「一華のこと、大切な友だちってことは、ずっとずっと変わらないの。」 「ありがとう。」 「だけど、もし子どもを授かったら。 きっと子どもや家族が最優先になる。」 「うん。それは当たり前のことだよ。」 「今までみたいに、すぐ駆けつけたり助けてあげられなくなるかもしれない。」 「うん。」 「だけど、ずっとずっと一華が大事な友だちってことは、変わらないの。」
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