第10章

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「暴君ね!ピッタリじゃん。」 「えええ。」 「気が強いというか、我慢強いというか、素直じゃないんだよね。」 「あの、さ。 ミユキも、レンさんって知ってる?」 「うん、もちろん。 涼子のストーカーだし。 って、いい意味でね!」 「いい意味って。」 苦笑いするしかない。 「レンさん、うちのお兄ちゃんの同居人だったの。」 「世の中は狭いねぇ。」 「それで、商店街のイベントを手伝ったりしてるうちに、なんかいろいろ聞いたり…。」 「涼子の息子のこと?」 「…うん。」 「涼子の別れた旦那って、私の姉の同級生だから、面識あるんだよね。」 「そうなんだ?」 「すっごい穏やかで優しい人で、優しすぎるくらい。 面倒見もすごく良くて、ずっと涼子のことも好きだったんだよ。」 「そうなんだ。」 「涼子がレンさんのことを好きなのも、ずっとわかってたと思うよ。」 「…え?」 「ずっと見つめてる好きな相手の気持ちって、どこへ向いているか、嫌でも気づいちゃうものじゃない?」 「…。」 「あれは、もう本当に見てるこっちまで苦しくなりそうだったよ。 運命ってやつがあるなら、残酷だと思うくらい。」 「それって、私が聞いてもいいことかなぁ?」 「私が知ってることしか、話せないけど。 だから、当人同士になにがあったのかは、また別のこととして…なら。」 「聞かせてもらえないかな?」 「…とりあえず、のぼせそうだから、あがってからでもいい?」 「あはは、そうだね。」 露天風呂を出る。 浴衣を着ると、温泉って雰囲気出るなぁ。 …カズマも翔太も、浴衣似合いそうだなぁ。 地元っていうのは十分わかっているけれど、それでもいつもと違う場所にいると、特別な日に思える。 明日朝起きたら、私もミユキも仕事に直行するから、おみやげは先に買っておこうと、売店をのぞく。
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