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「やっぱり、温泉まんじゅうだよね。」
「これって、なんでおいしいんだろうね。」
黒糖の生地と、こしあんが絶妙なおいしさで、小ぶりなフォルムは可愛さもあるけれど、ついポイポイと口に運んでしまう。
「私、これにしよう。」
「私も!」
温泉まんじゅうの箱を持って、レジへ向かう。
部屋へ戻ると、夕食の準備が始まっていた。
テーブルの上に、お刺身や、小さな鍋に、揚げ物や小鉢が所狭しと並ぶ。
「うわぁ、おいしそう!」
思わず飛び出した言葉に、仲居さんが微笑みながら、鍋の火をつけた。
「乾杯しよっか。」
「何回目の乾杯だろうね。」
「あはは、そうだね。」
グラスを合わせた。
珍しいものを見たとき、驚いたとき、嬉しかったとか。
あとは、おいしいものを食べたときも、カズマや翔太に話したくなる。
一緒に暮らすって、不思議。
「おいしくて、いくらでも食べられると思ったけど、さすがにお腹いっぱい。」
「うん、私も。」
ごちそうさま、と、手を合わせてから、それでもお酒は別腹と、グラスを持って窓際のイスに座る。
「涼子の話だけど…。」
「うん。」
ミユキの話に耳を傾けた。
ミユキと涼子さんは、小、中学と同じで、高校は別々になったけれど、時々会うこともあったらしい。
今もキレイだけれど、幼い頃もすごく可愛くて、商店街でも有名で、みんなに可愛がられる反面、変な人に声を掛けられることも多かった。
そのせいか、自己防衛というかのように、キッパリとした物言いをするようになった。
それでも、嫌われるどころか、すごく好かれていた。
だけどやっぱり子どもだから、自己防衛にも限界がある。
レンさんは商店街の近くに住んでいて、放課後はよく商店街にいたらしい。
これは私があとから知ったけれど、お兄ちゃんが中学を卒業する頃まで、商店街の近くのアパートに住んでいたみたい。
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