第10章

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だから、お兄ちゃんとレンさんは同じ小、中学校だったんだ。 私が生まれる前のことで、お兄ちゃんが高校生になる頃に、家を建てるから今の場所に引っ越したけど、その頃私はまだ小学生にもならないから、記憶にはほぼない。 小学生の頃に、中学生に絡まれている涼子さんを、レンさんが助けて以来、見かけると話すようになって、二人は仲良くなった。 けれど、12歳も離れているから、涼子さんが小学校の高学年になる頃に、レンさんは大学生だったから、レンさんを警戒する人も増えた。 どういう縁かはわからないけれど、商店街の中の会社にレンさんは就職して、商店街のお店との仕事も増えるから、保護者として見守っていると理解されるようになった。 涼子さんは、居酒屋の手伝いもしていたし、商店街のイベントの手伝いもしていたから、レンさんに会うことも多かった。 涼子さんが高校を卒業した頃、レンさんは社長さんに見込まれて、社長さんが引退するときに会社を引き継ぐことになった。 涼子さんは、高校を卒業したのを機に、レンさんに想いを伝えたけれど、会社を引き継ぐことになったレンさんは、涼子さんの気持ちには答えられなかった。 「どうして?」 「だって、レンさんの仕事ってほとんどが商店街のお店がらみで、涼子のこともレンさんのこともずっと知ってる。 それでもしレンさんと、涼子がそういう仲になったら、また警戒する人も出るかもしれないし…。」 「子どもじゃないのに?」 「子どもの頃から、ずっと狙ってたんじゃないか、って。」 「そんな…。」 「みんながそういう風に思うわけじゃないけど、変な憶測ほど、本当っぽく噂が回るんだよね。 …悲しいけど。」 「…。」 「噂を回してる人たちも、悪意はないけど、結果本人たちは傷つくよね。」 「…うん。」
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