第10章

16/61
前へ
/670ページ
次へ
涼子さんの別れた旦那さんは、元々涼子さんの高校の先輩で、なにかのきっかけで親しくしていて、涼子さんがレンさんにフラれた後しばらくして、ふたりはつき合うことになった。 涼子さんが21歳の頃。 (元)旦那さんと結婚すると、話が進んでいた時に、 「涼子がレンさんにさらわれた、って。」 「へ?」 「涼子の旦那さんから、私のところに来てないかって連絡が来たの。」 「…。」 「その頃は、涼子と頻繁には会ってなくて、全然知らなくて。 結局3日後に帰って来たの。 レンさんと一緒に。」 「…。」 「涼子は、結婚やめたいって言ったんだけど、両家の挨拶も結納も済ませて、結婚式の招待状も発送済みで、それよりなにより、旦那さんは絶対に別れない、って。」 「…。」 全部許すから、戻っておいでって、旦那さんは譲らないし、レンさんも引かなかったけれど、急に涼子さんが、 ’やっぱり、結婚する。’ って。 涼子さんは何事もなかったように、入籍をして結婚式をして、次の年に亮太郎くんが生まれた。 「…なんか、苦しい。」 話を聞き終えて、胸が苦しくなる。 「タイミングってのがあるのはわかるけど、きっとレンさんも引き継いだ会社を捨てるわけにはいかなくて…。」 「うん。」 「涼子も、思い続けるのが苦しくなるほどの思いがあったんだと思うし。」 「うん。」 「別れた旦那さんも、ずっと涼子のこと思ってて…。」 「うん。」 まわりが、’なんで’’どうして’なんて言うよりずっと、いろいろな思いを抱えているんだと思う。 「実はさ、翔太とユキちゃん別れちゃったんだよね。」 「そうなの?」 「ユキちゃん、妊娠したんだって。」 「へ? まだ大学生じゃなかったっけ?」 「うん。 だけど、翔太とやり直したいって会いに来て。」 「えええ。」
/670ページ

最初のコメントを投稿しよう!

514人が本棚に入れています
本棚に追加