第10章

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「今の彼とがんばるって、帰っていったよ。」 「うん、そうだよね。」 「なんかもう、いろんな思いに飲まれそう。」 「って、一華も大分ツラい思いしたと思うんだけど。」 「ははは。」 「普通って、なんだろう~!とか思う。」 「…うん。」 「みんな同じじゃないんだから。 普通、みたいな基準なんてどう作るのよ! なーんて。」 「そうだよね。 カズマと翔太と暮らし始めた時、周りがどう思うか…って、すごく不安になったな。」 「今は?」 「誰かわかんない’周り’ってのに、負けなくて良かったなって思う。」 「うんうん。 自分の気持ちに正直にいたいよね。」 「そうだね。」 温くなったビールを飲み干した。 「そろそろ、寝よっか。」 「うん。」 ふかふかの布団は気持ち良くて、広いお風呂も、おいしいご飯も、大満足だけど…。 目を閉じた時にふと思うのは、カズマの待ってる家に帰りたいな…。 ゆっくり眠りにおちた。 少し早めに起きて、朝風呂を堪能して、朝食バイキングでお腹いっぱいで、ホテルを出た。 「楽しかったぁ。」 「うん!」 せっかくだから、最後まで贅沢をしようと、タクシーに乗り込む。 「目一杯、楽しんだから、仕事もがんばりますかぁ。」 「そうだね。」 お店の手前でタクシーを降りて歩く。 日常があるからこそ、特別が、特別だって思えるのかもしれない。 ミユキと二人で買った温泉まんじゅうを、休憩室に置く。 「一華先輩と、ミユキ先輩、どこか行ったんですかぁ?」 ごちそうさまです、と言いながら、後輩の子達がおまんじゅうをつまむ。 「うん、温泉行ってきたよ。」 「いいですねぇ。」 「楽しかったよ。」 休憩を終えて、午後の仕事もどんどん進めて、今日も仕事を終える。 帰る支度をして、お店を出る。 ほんの少しずつだけど、陽が長くなっている。
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