第10章

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「ハーナちゃん!」 「カズマ!」 ヒラヒラと手を振っている。 「なにしてんの?」 「ひど。 ハナちゃんに会いたくて、待ってた。」 「仕事は?」 「休みだよ。」 「そうだったんだ。」 スッと荷物を奪われる。 ついでに、手も奪われた。 「温泉楽しかった?」 「うん! 露天風呂何回も入って、朝風呂も入って来たよ。 あと、ご飯もすごく豪華で…。」 「うんうん。」 ニコニコしながら、カズマが話を聞いてくれる。 「あ、おみやげあるんだ。 大将にも買ってきたんだけど、お店寄ってもいい?」 「うん、もちろん。」 大将の店へと向かう。 「翔太もいるかな。」 「いると思うよ。」 「亮太郎くんはいるかな?」 「まだいないかなぁ。」 「保育園?」 「うん。」 「そっか。 それじゃあ、渡しておいてね。」 「ありがとうね。」 「うん。」 思い合っていても、すれ違うこともある…。 胸がざわざわして、キュッと力を込めてカズマの手を掴む。 「ん?」 「なんでもない。」 この笑顔を変わらぬまま、守りたいと思う。 大将の店に着くと、翔太もいて、たった1日出掛けていただけなのに、変な感じだぁ。 「楽しかったみたいだね。」 「うん。」 カズマはお休みの予定だったけれど、どうせ店に来たならと、エプロン姿で手伝っている。 でも、楽しそうだなぁ。 レモンサワーのジョッキを持って、小上がりにカズマが来た。 「ハナちゃん、ごめんね。」 「ううん、のんびりしてて楽しいよ?」 「なんか食べたいのある?」 「お腹はいっぱい。」 「そっか。 ちょっと落ち着いたら、一緒に帰ろうね。」 「大丈夫なの?」 「うん。 元々休みなんだから、そのくらいは主張する。」 「あはは、わかった。 待ってる。」 「ありがと。」 そっと頭を撫でられた。
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